私は昔から料理が得意ではない。
嫌いなわけではないけれど、複雑な行程や調味料を覚えられないのである。
だから料理が好きで上手な人をみるとうらやましくなる。
「私ももっと料理が上手になりたいな〜。」とつぶやくのが癖になった。
美味しいものが作れると自分だけでなく人を喜ばせることができるからだ。
大人になって、やっぱり料理上手になりたいと思い、本をみながら作った。
間違えないようになんども本をみて、調味料もきっちり測る。
ところが本ばかり見て手際が悪いので、焦げたり茹で過ぎたりうまくできない。
今度こそと野菜を切ることに真剣になり過ぎて、それだけで疲れる自分もいた。
りきみすぎだった。
ある時、料理上手になることを諦めた。
本を見ないで、適当に感覚でやることにしたのだ。
するとどうだろう。
まず疲れなくなり楽しくなった。
創作で作っても問題がなかった。
結局、苦手意識が自分を追い詰めていただけだったのだ。
確かに複雑な料理はできないが、簡単なものなら私でも十分に作れたのである。
苦手意識の原点は母だ。
料理上手の母と自分を比べていたのだ。
でも比較をやめて自分の感覚に集中したら、完璧を手放してリラックスしたら、意外と楽にできたのである。
料理をして疲れ切っていた頃が嘘のようだ。
肩の力を抜いて感覚を大事にした方がうまくいく、物事はそういうものかもしれないと思った。