「イラっと」した時の対処法
人は「イラッと」したとき、大抵の場合次の二つの反応のどちらかをします。一つ目は、そのイライラをそのまま相手にぶつける、二つ目はイラッとしたことを我慢する・抑え込む、です。このどちらも、良好なコミュニケーションとは言えません。一つ目はそのまま言い争いになることも多いし、もし相手をやり込めることができても、心の通い合った理解を得ることはできないからです。二つ目は表向きは波風が立たずに済みますが、こちらも自分のことを理解してもらうことはできません。自分が「イラっと」したことや、なぜ「イラっと」したのかを伝えることができない限り、理解してもらえることはないのです。
でも「イラッと」したことをきっかけに、お互いの理解を深める会話をすることもできます。ここではお互いの理解を深める会話のステップについてお伝えしていきたいと思います。
⑴「イラっと」したことに気づく
最初にすることは、とにもかくにも自分が「イラッと」したことに気づくことです。
理解を深める会話をするためには、感じていることをどう伝えるのか、少し知性を使う必要があります。そのためにまず、自分が感じていることに気づく必要があるのです。
「あ、私今、イラっとした!」その感覚がとても大切です。
自分が感じていることに気づけると、次にどうやって知性を働かせるのか考えることができます。なのでまず、自分が「イラっと」したことに気づくレッスンをしてください。
とはいえ、私たちは自分の感じていることを素直にキャッチできないこともよくあります。自分が感じることに対して自信を持てなかったり、疑いの自分が出てきて、無意識にその感情を消してしまうこともあります。
例えば、会話の途中で携帯を触る夫に「イラっと」したとしましょう。でも「こんな些細なことでイラッとしない方がいい。」と考えたりしませんか?そういう時、きっとあなたは「イラッと」した感情をおさえこもうとしているはずです。「これぐらいは我慢しよう。」そんなふうに自分の「イラっと」を封印していることってありますよね?封印しようとするのが悪いというわけではありません。ただこの封印癖がつくと、本当は自分が「イラっと」しているのに、無意識でなかったことにする習慣ができてしまうということです。
そして、どんなに些細なことのように見えても、なかったことにして消してしまっていい感情はありません。なぜなら感情とは、自分の心の声です。言い換えると自分の分身のようなもので、その分身を消し続けるということは、ひいては自分自身を消すことに繋がっていくからです。自分の感情を抑えることが続くと、自分がどうしたいのかわからなくなったり、自分がそこにいる意味が見えなくなったりします。そうならないためにも湧いてくる感情を押さえ込まず、まずはただキャッチする。それがまず第1歩です。
⑵深呼吸をする
感情的になっているときは、うまく知性を使えません。なので一旦、ヒートアップする自分を落ち着かせる必要はあるでしょう。それには、深呼吸が一番です。
鼻から5秒息を吸って、ゆっくりと吐き出します。
そのとき、無理やり自分の感じている「イラっと」を消そうとしなくて大丈夫です。「イラっと」をどうにかしようとは考えないでください。
ただ、呼吸に意識を向けることが大事です。その時、吸った息がおへその方に入っていくのをイメージしましょう。そしてお腹から息を吐き出します。
上手に呼吸ができるとカーッとなっていた頭が冷静になってくるのがわかるはずです。でも冷静にならなくちゃ、などと思う必要はありません。そうしようと思えば思うほど、焦ってしまうからです。ここでは、とりあえず呼吸に意識を向けてみる、お腹まで息を入れてみる、くらいでいいしょう。
⑶自分を責めない
「イラっと」する、それは何らかの刺激に対してわいてくる、心の動きです。それは例えて言うなら、火打石をカチカチ打った時に出る火花のようなものです。そのくらい自然に発生するものなのです。火打石をカチカチ打って火花が出ているのに、火花を止めようとするのはエネルギーがいりますよね。それだけでストレスが増えていきます。自然に発生してしまう性質のものを抑えようとすることは、自然な自分を変えようとすることです。なので刺激があって感情が生まれるということに対して自分を責めないでもらいたいのです。生きている限り自然なことだからです。そして生まれた感情に対しても、罪悪感を持つ必要はありません。
大切なことはその生まれた感情をどう扱うかであって、その感情が生まれてしまうこと自体は何も悪いことではないのです。後に詳しく述べていきますが、正しい扱い方をすれば、一見ネガティブに見える感情もお互いを理解し合うための大切なきっかけとすることができます。
生まれる感情を否定したり、そういった感情を生む自分を責めることはやめましょう。前にもお伝えしたようにストレスが増えるだけだし、何より自分自身を否定することになってしまいます。感情は大切な大切な自分の分身です。 「イラっと」した自分を責める必要はないのです。
⑷相手に一番伝えたいことは何かを明確にする
以前お伝えしましたが、私たちの心の中には複数の欲求が混ざっているのが普通です。それが「イラっと」した時にわーっと混ざって出てくるので、相手から見ると何が言いたいのかわからなくなってしまいます。その結果、伝えている自分も理解してもらえないストレスがたまるし、相手も明確にどうしたらいいのかわからないまま不愉快になってしまいます。
なので、自分が「イラっと」したことに気づけたら、自分が何に「イラっと」したのかをちょっと考えてみましょう。話の途中で携帯を触る夫に対して「そりゃあ、夫が携帯を触ってることよ!」と思うかもしれません。でももしかすると、何度もお願いしているのに聞いてもらえない「イラっと」もあったり、あるいは自分が子供の頃に「人の話を聞くときは相手の目を見なさい。」と怒られたのに、目の前にいる人がそのマナーを守らなことに対する「イラっと」が混ざっているかもしれません。
夫が話の途中で携帯を触る、という事一つとっても「イラっと」する理由や内容は微妙に人それぞれ違います。なのでまず、「イラっと」する夫の行為の中で、何がどう嫌なのか、考えてみてください。もしかすると「イラっと」した渦中の時にはそんなことを考える余裕はないかもしれません。そしたら後からでも、「あの時自分は何が嫌だったんだろう・・・」と振り返ってみるといいでしょう。日頃繰り返しているパターンがあるなら、その時のことを思い出して、考えてみてください。そして「イラっと」した理由がわかったら、それを踏まえて自分が一番伝えたいことを明確にしましょう。
このシリーズの冒頭で私と夫の休日の朝の会話を紹介しました。覚えていますか?午前中に所用を済ませて午後に二人で素敵な時間を過ごしたいと思っている私が、朝からのろのろと動かない夫にイライラしてしまうケースです。(冒頭の記事はこちらです)
このケースでは、私が一番伝えたかったことは「午後、二人で素敵な時間を過ごしたいので、ちょっと急ぎで家事を手伝って欲して欲しい。」ということでした。ところが口をついて出たのは「あなたが手伝わない。」とか「いつもあなたが部屋を散らかす。」といった不満でした。さらには「あなたのためにやってる。」なんて押し付けがましいことまで言っています。こうやって振り返ってみると一番言いたいことがはっきり言えていない上に、他に余計なことを色々と言っていることがわかります。これでは、相手に伝わらないのも無理はありません。
⑸「私は〜」というメッセージで伝える
さて、自分が何に「イラっと」したか気づいて、その上で何を伝えたいのかが明確になったら、いよいよ相手に伝える時です。その時、最も大事なのが主語を「私は」で伝える、ということです。
私たちは「イラっと」した時、大抵の場合「あなたが悪い」と思います。そして「あなたが」と言ってしまうのです。でも冷静に考えてみて、こちらが望むことをしないことは悪いことなのでしょうか。部屋が散らかっているのが困る、というのは私の事情であって、部屋が片付いていなくても平気な人もいるのです。それを一方的に「あなたが片付けないから悪い」というのは本当は筋が通りません。それからいかに筋が通っているように思えることでも、目的は相手を責めたてることではなく、理解し合うことです。そのために夫にはこちらの言う事に耳を傾けてもらわなくてはなりません。それにはいきなり「あなたが悪い」と言うよりも、「私がイラっとする。」と伝える方がいいのです。
結局のところ「イラっと」するのには相手の問題と自分の問題が両方混ざっています。自分の問題で「イラっと」している部分もあるのですから、その部分については自分で責任をとる話し方をする方が健全な会話になります。「あなたが」と始める会話は相手のせいにしていて、依存的な話し方なのです。それが「私は」というスタートになると、自分の感情に責任をとった話し方になり、相手が受け取りやすくなるのです。
例えば、部屋を片付けない夫に対して「部屋の片付けをしないあなたが悪い。あなたが私をイラっとさせる。」と言うのと、「私は部屋が散らかっているとイラっとするの。」と伝えるのとではニュアンスが違いますよね。
「イラっと」したときはどうしても「あなたが悪い」という風に言ってしまいがちですが、ここをグッとこらえて「私はイラっとする」と言い換えることができると、その後の会話の進み方が変わってきます。
⑹相手が何を感じているのか聞く
さて、自分が何に「イラっと」していると伝えることができたら、そのあとはそう言われて相手がどう感じたのかを聞いてください。相手が感じていることを聞く大切さは後ほどまたお伝えしますが、会話、とは一方的にこちらの意見を押し付けるものではありません。なのでこちらの感じていることを述べたあとは、必ず相手がそれに対してどう感じたのか、耳を傾けましょう。この最後に相手の話を聞く、というのをほとんどの人がやりません。「私は」と会話をスタートしてみたり、自分の言いたいことを明確にするなどして、いいところまで進んできても、最後に相手の感じていることを聞かないと、それは会話とはいえないのです。
相手の話を聞く時、相手が全部喋り終わるまで口を挟んではいけませんよ。相手の反応が思ったように返ってこないと、途中で口を挟みたくなるのが人情ですが、それをやられてしまうと、結局相手にとっては否定された、強制された、という感覚が残ってしまうためです。そうすると、こちらが本当に言いたいことを理解してもらうのが難しくなってしまうのです。
相手が話終わるまで、じっと我慢して聞いてください。そしてそれについて何か感じることがあれば、また「私はこう感じる」と、伝えましょう。この繰り返しが健全な会話なのです。
さて、ここまで「イラっと」した時の対処法をお伝えしてきました。これを見てどうでしたか?「イラっと」した時に深呼吸をしたり、自分の気持ちをキャッチできるようになるのは、簡単ではないかもしれません。でも、こういった知恵を知っているのといないのとでは、実は全然違います。知恵があれば、気持ちが落ち着いてから言い直すこともできますし、相手を攻めすぎていることに気づけば謝ることもできます。最初のうちは、今までと同じパターンで「イラっと」をぶつけてしまうかもしれません。あるいは「イラっと」を我慢しすぎてしまうこともあるでしょう。でも、そういう自分も責めないでください。完璧にうまくできる人なんてそうそういません。それでも取り組んでみようとすることが、後々のコミュニケーションに違いをもたらすのです。気長に取り組んでいきましょう。
つづく
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